最新技術・研究 その3
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水産・観賞魚業界の技術は日々、進歩しています。
昔ながらの飼育法にとらわれず、 新たな試みをご紹介いたします。



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連載 第三回
2004年1月24日 掲載


  前回、手応えがあったミネラル剤を仮称「ミネラルA」とします。
  そのミネラルAを中心に適正な濃度を探るため、5段階ほどに分けて試験を開始しました。

  濃度を割り出すのは比較的簡単で、2〜3日でそれぞれに異なる結果がでました。

  しかし、イトミミズの維持に欠かせないのは判明しましたが当然、それだけではストック方法の
  確立とまではいきません。ミネラルAを適正濃度に調整しても、容器の大きさや温度、密度を
  変えると以前と同じ様に腐敗する結果となります。

  深く考えても進まないので、とりあえず次の試験は、最適な密度と水深・水温について研究を開始。
  基本容器はプラケース約10リットル、ホーローバット10を使用。
  水は水道水を一晩、汲み置きした水にミネラルAを適量散布のみ。

  写真左・左下、小さなマリモ状の容器は、ミネラルAを発見した試験区です。
  継続して経過を観察しました。






  
  試験数が増えたため、この時点でイトミミズ10キロを中国より直輸入開始
  豊富な材料で、様々な試験を行ないました。

  秋から冬になり、水温が10度近くまで下がる日が多くなりました。
  水温の違いを確認するため、24時間エアコンで暖房した室内と、
  常温の2ヶ所に分けて試験を増加。

  やはり水温が20度前後にすると活動が活発になり、開始直後から
  外見で大きな変化が見られました。






ホーローバットの個体写真です。
送気がないため、盛んに揺れて酸素を吸収しようと
動いています。写真ではわかり難いのですが、
ムカデのような細かな長い毛が確認できます。
マリモ状態から少し広がると言うか、触手が伸びた
イソギンチャクのように見えます。

水深・密度に関係なく、同じ動作をしていました。





数時間後から翌日にかけて、今度は揺らめきが止まり、
マリモ状態に戻りましたが、見るからに活性が低下し、
底辺には斃死も見られます。

  危険な状態のため、水換えを行ないました。
  かき混ぜて汚泥と斃死を浮き上がらせ1分ほど放置すると、生きているイトミミズはすぐに沈下します。
  汚れた上澄み液を排水すると、簡単に汚れと生きているイトミミズを分離することが可能です。
  
  水換えを行なった直後は状態よく、短いマリモ状態で揺らめき、徐々に延びて揺らめいた後に、
  また活性が低下する繰り返しとなりました。

  屋外の10度前後では送気がなくても維持できていましたが、室内では過密なほど早く弱るため、
  酸欠になっていることが容易に判断できます。




屋外はそのままに、室内の容器だけはすべて、
送気を行うことにしました。



多少、ムラはありますが、全体的に細くなり、
小さな揺らめきを見せています。水深による変化は
ありません。もっとも良い状態です。

イトミミズは酸欠がないと予想していましたが、
この結果から、イトミミズは溶存酸素濃度に合わせて
酸素を取り込むために、形体を変化させます。
そして、極度に低酸素状態になると生存できない
ことが判明しました。


  
簡易的な溶存酸素テストキットで測定すると、水温20度の条件下で、
  ★4mg/リットル以下になると、ムカデのような長い毛のようなものが延びて、
   盛んに酸素を取り込むための活発な活動が見られます。
  ★2mg/リットルを下回ると活動を停止し、斃死が始まります。
   すでに限界を超えた低酸素濃度となります。

  ★6mg/リットル以上で状態の良い、自然な揺らめきが見られます。
  
  水温10度前後の低温は、送気がなくても酸欠の症状を見せませんが、
  生理活動が低下しているために、それほど酸素を必要としないと思われます。

  逆に25、30度と高温になれば豊富な酸素が必要になるともいえます。

  続いて飼育密度に注目すると、金魚と同じく薄飼いほど状態が安定します。
  密度が低いことにより、水質悪化の速度を遅くすることができます。
  数通りの試験結果をもとに、池底が60%以上、見えるようにすると良いでしょう。
  何らかの障害物があれば、物陰に隠れるように寄り添いますが、
  狭くて壁面と触れる状態は斃死につながります。

  水換えについては夏場の金魚と同じく、3日に1回程度の周期で行なう方が安全です。
  金魚愛好家なら苦にならない周期でしょう。急な状態悪化で白濁した場合は、
  即、水換えを実施して下さい。イトミミズ特有の臭気が気になるなら、水換えの頻度を
  上げると良いでしょう。

  他に、20度での実験で判明したことは、水深はあまり関係がないようです。
  水流については、強めの送気を行なう程度です。特にポンプで水流を発生する
  必要はありませんでした。

  水温10度を下回る、常温で試験中のイトミミズを見る限り、死ぬようなことはありませんが、
  張りがなくなり、網で掬うと簡単にバラけてしまいます。
  色は赤みが薄く、イトミミズとしては厳しい環境のようです。そのままヒーターで15度まで
  加温すると、張りが戻ります。これらのことから、イトミミズも10度以下の低温は厳しく
  15度前後を維持する方が良いようです。冷蔵庫は5度まで下がるため、短期間の
  保存は最適かもしれませんが、2〜3週間の長期には適さないように感じます。

  仮死状態の低温5度で短期間蓄養か、活性は低くても活動に問題がない
  15度以上の長期蓄養。使い分けの参考としてください。
  


連載 第四回
2004年2月9日 掲載

掲載内容の無断転用・転記を禁止します。


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