最新技術・研究 その3 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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水産・観賞魚業界の技術は日々、進歩しています。 昔ながらの飼育法にとらわれず、 新たな試みをご紹介いたします。 |
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連載 第五回 2011年4月2日 |
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第四回の連載から7年以上が経過しました。早いものです。 その間にイトミミズの論文を、金魚三昧 第二号に寄稿しましたので、参考にして頂けると幸いです。 寄稿した詳細な内容は、さすがに掲載できません。大まかに言うと「水流」の方向の重要性を記しました。 この7年間はすさまじい戦いでした。様々な環境を作ってイトミミズの観察を続けました。 そろそろイトミミズの研究に投入した費用が、かなり累積してきました。 イトミミズの販売もしているので、そこから研究費は捻出されていますが、先が見えない現状に、少し焦りが出てきました。 はやく結果を出して回収できるようにしたいものです 一時、のめり込んでいたのが、浅いプラスチックコンテナに粘土を入れて飼育水を循環する方法です。 オーバーフローで循環したり、エアーレーションだけで飼育したり、設置直後のイトミミズの様子は、非常に安定していました。 これで完璧か?と思いなが飼育を続けること数週間、またもや壁にぶつかりました。 いつものように、少しずつ死んで行くのです。 |
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状態が良いのは最初だけ。 徐々にイトミミズの排せつ物で汚れだすと、どうにもこうにも止まらないほど死んでいきます。 粘土を使用することで排せつ物を効率よく洗い流すことができなくなり、結果、環境悪化によって死んでしまいました。 生息する環境についての情報 三卯養魚場は中国から冷凍赤虫を輸入しています。 その冷凍赤虫を生産している中国人から、こんな話を聞くことができました。 中国の赤虫生産は、広大な水田に大量の鶏糞を撒いて自然発生した幼虫を採集します。 新しい水田に鶏糞を撒き、水を張って最初に発生するのがイトミミズ。そのあと、水が汚れて来たらイトミミズは消滅して、 大量の赤虫が湧いてくるそうです。その頃になると、あのドブ川と同じ硫化水素やメタンガスなどの、強烈な悪性を放っています。 つまり、極端に汚れすぎた水系では、意外とイトミミズは弱いとも言えます。 また、某大手水産飼料メーカーの上層部の方からの話では、イトミミズは「汚れかけた川」を好むということです。 この「汚れかけた川」と「汚れた川」との表現の違いが、非常に繊細なところです。 このアドバイスにより、「イトミミズ」=「ドブ川」 の固まった考え方を捨てて、新しい目を持ってイトミミズを観察することにしました。 習性の再検証(排せつ物) まずはイトミミズを管理・養殖する上で、問題になる要素を大まかに分類すると3つです。 ■水温 ■飼料 ■床 この3つの要素を解明して、初めてイトミミズの長期飼育・国内養殖が可能になると考えています。 目下、問題がすぐに現れる排せつ物について考えました。 イトミミズは泥底の川にいる時は、頭を下にして肛門を上につきだし、常に排せつ物や地中の泥を排泄しています。 雨量や排水などで水流、水深が変化しやすいところをイトミミズが好みます。 流れのある川の場合、図のようにイトミミズの排せつ物は水に押し流され、周りには少し重たい細かな砂や粘土で覆い尽くされます。 イトミミズの周りに堆積している物の多くは、排せつ物より粘土などの無機質なものが多いようです。 雨の後など、水流が速くなる時は地中に潜り、その間に堆積した排せつ物などを洗い流す効果があります。 |
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川のイトミミズの排せつ物の動き |
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雨量が少ない時期に川の流れが弱まると、とたんにイトミミズの周りには排せつ物ばかりになります。 そのような状況になると土中は酸欠になりやすいため、土中のイトミミズは這い出し、泥の上に 塊となって酸素を取り込もうとします。 十分な酸素や水流がある環境でも、ベアタンクでは塊になり、排せつ物を下へ押し下げる動きを取り、 塊の中には排せつ物がたまらないようにします。餌となる有機物は、器用に塊の中に留めます。 |
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ベアタンクでの排せつ物の動き |
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この作用を利用し、プラスチック容器の底が網になり、そこへイトミミズを置き、少し大きめの容器に水を入れて重ね、 イトミミズの塊の底にたまる排せつ物を、網越しに分離して畜養する海外製品があります。 ただバケツに入れて置くだけよりはるかに長持ちしますが、長期畜養・養殖するまでには至りません。 現時点では、泥や活性炭を床にした環境で高過密飼育を行うと、管理が行き届かず、排せつ物によるイトミミズの被害が 大きいことが分かってきました。薄飼いであれば常温下で1年近く、水換えなしで繁殖し続けました。 泥や活性炭を床にした環境での高過密飼育は、大量にかけ流しができる井戸水が利用できれば、 もっとも効率よく畜養・養殖が可能と思われます。 弊社は大阪市内にあり、井戸を所有していないので、到底この実験はできません。 目標とするところは、ビジネスのことも考えて、閉鎖的環境を基本とし、高過密で長期畜養、さらに効率の良い増殖です。 徐々に目標が高くなってきているので、本当に技術が完成するのか分かりませんが、コツコツ研究するしかありません。 習性の再検証(床) 今までの実験から、床がある環境で高密度培養は、嫌気層の発生から無理なように感じます。 床がない状態で畜養する方向で、新たに研究をすすめました。 床があることでイトミミズを取り出すことが困難になる、嫌気層が発生しやすい、排せつ物の分離が不可能に近いなど、問題点が多いです。 床のある環境へ大量のイトミミズを投入すると床の中に入ろうとせず、すべて床の上で塊になることからも、高密度を前提にすると ベアタンクしか選択肢がなくなってしまいました。 では、どのようにすればベアタンクで長期間、イトミミズを畜養できるかの検証に入りました。 @水流の方向を調整した水槽で畜養。 A普通の角型水槽にエアーレーションを一個だけ投入。 B50cmのFRP洗面器、丸型の容器にエアーレーションを一個だけ投入。 水温10℃での検証では、@〜Bは1〜2週間、生存させることかができます。 しかし、活力はなく、後半では伸びきって飼料としての価値はありません。 水温20℃での検証では、@〜Bは1週間程しか生存しません。あとは赤く濁った水で、あの悪臭立ち込める状況になります。 結果的には答えを導き出せていません。 少し話は脱線しますが、状態の良いイトミミズの塊を激しくほぐすと、個々にクルリと丸まって底に沈みます。 弱っているとダラリと伸びたままです。この状態を確認することでイトミミズの活性が分かります。 丸くなると何かに引っ掛かりやすくなるので、川の流れに流されっぱなしにならないように、すぐに何かに引っ掛かり、 すぐさま頭を土中に埋めて体制を整えようとするための習性と思われます。 習性の再検証(飼料) 長い時間をかけて観察しているうえで、ふと疑問に思いました。イトミミズは何を食べているのだろうか。 環境を探る以前に、イトミミズが摂取する飼料の確立が先ではないかと感じました。 イトミミズが死ぬのは、環境が適していないからではなく、餌枯れの可能性が高いからです。 多くの文献では、イトミミズは「有機物」を食べている、それしか書かれていません。 とりあえず手に入るものを順番に試してみました。 牛糞、鶏糞、腐葉土、糠を発酵させたもの、イースト菌、水産飼料の粉末、クロレラの粉末、スピルリナの粉末、PSB、 死んだ金魚、味噌、酒粕、カブトマット、ミミズフンなどなど。 農業や園芸に詳しい方から、肥料について色々と意見を聞きながら、有機物として簡単に安全な製品が手に入る安い 製品を試しましたが、望んでいるような結果には至りませんでした。 投入すると、明らかにイトミミズが避けるもの、最初はなじんでいても突然、全滅するものの二種類です。つまり全滅です。 ではイトミミズは何を食べているのか。肥料を入れた土でなければならないのか。 土や泥の粒子と一緒に有機物を摂取しないといけないのか。 そうなるとまた、床の研究に逆戻りしてしまう悪循環にはまってしまいました。 根本的に高密度培養ができない生き物なのだろうかと、半ばあきらめかけていました。 もう一度、基本に戻ってイトミミズの観察をすることにしました。目の前にいるイトミミズが生きていくためには、 この体型や習性から、どういった環境や特性があるのか。想像を膨らませてイメージしました。 大きな前進 改善しなければならない事を2点、思いつき、すぐに実行しました。 その点を改善することで、今までは難しかった長期飼育が可能となっています。 ベアタンク1100×600の面積でイトミミズが5kg、約2カ月以上、問題なく元気に餌を食べて元気にしています。 殖えているかどうかまでは計っていないので分かりませんが、見た目からは現状維持+αと言ったとこでしょうか。 今までとは違う、確かな手ごたえです。あきらかにイトミミズの活力が上がっています。 水温が20℃近くまで上昇しても活力は変わっていません。 何か繊細なバランスがピタリとはまったような、不思議な感じです。 みるみる殖えるまでは至りませんが、元気な状態で長期飼育できているだけでも大きな進歩です。 今回、得ることができた結果や理論を基に、新しく畜養水槽のシステムを作る準備中です。 システムが完成しましたら次号にてご紹介いたします。 引き続き、観察を続けます。 次回へつづく |
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